気軽に外に行けないので、じっくり腰を据えて接続法を学ぶシリーズの第一弾です。接続法はやろうと思えば、ある程度まではパターンの丸暗記とか、「直説法は本当、接続法はウソ」式の漢気溢れる理解でもさばけるっちゃさばけるのですが、その本質を深く理解しておかないとかならず頭打ちになります。それに、なにより、ここがわかると一気にスペイン語が生き生きとしたものに思えるはずです。というわけで、お付き合いください。本学の人たち向けに言っておくと、二年生以降の読解やら作文の授業ではバシバシ接続法出てきますので、今のうちに理解を深めておくといいですよ。
第一回目は根本的なところから。
法とは ?
そもそも、直説法とか接続法、英語なら仮定法の法とはなんなのでしょうか。正直、個人的にはあまりうまいネーミングではないです。この法、スペイン語では modo, 英語では mode と言うのですが、むしろこちらの方がわかりやすいのではないでしょうか。省エネモードとか、全力モードという時の mode です。したがって、語学における法とは、話す、書く際の話者の態度・モードということになります。
直説とは?接続とは?
それでは、直説法の直説、接続法の接続とはなんなのでしょうか。直説の方からいきましょう(それますが、直接ではないですからね。)。接続法を理解するのには、直説法を理解しておく必要があります。結論から言うと、直説とは、 私風にかみ砕いて言えば、
発言が事実であることをゴリ押しすること
です。つまり、直説法とは、事実ゴリ押しモードということになります。
例えば、Hablo, hablas, habla… という一連の活用を多くの人は「現在形」と覚えていると思いますが、これは教科書などにもよく見ると書いている通り、正確には「直説法現在形」です。つまり、「現在の出来事を事実としてゴリ押しする形」です。従って、Yo hablo. は「私は話す」と、フラットに言っているのではありません。「私は話します (事実ですから、これ、マジ事実ですから!)」という前のめりなニュアンスが乗っかっているのです(さすがにこれは大げさですが)。
さて、では、ここで問題です。「彼は私がスペイン語を話すことを望んでいる」という文を
Él quiere que yo hablo español.
という風に訳すとアウツなのですが、何故でしょう?

そうです、quiere que の中で、直説法の hablo を使っているのでアウツなのです。 これがアウツな理由は、直説法は「ゴリ押しモード」であることを考えれば自明です。
Él quiere que = 彼は que 以下のことを望んでいる。
Yo hablo español = 「私はスペイン語を話す!(事実ですから、これ、マジ事実ですから!)」
ですので、Él quiere que yo hablo español. は、
「彼は私はスペイン語を話す(事実ですから、これ、マジ事実ですから!)ことを望んでいる」
という意味になってしまいます。これは明らかにおかしいですよね。「望む/querer」とは、「事実ではないことが事実だったらいいなあ」と考えることです。なので、querer queと事実ゴリ押しの直説法は異様に食い合わせが悪く、矛盾が起こってしまうのです。このゴリ押しとの矛盾は以下のようなケースでも起こります。
「私は君に部屋を掃除するよう命じる」のつもりで、
Te ordeno que tú limpias tu cuarto.
limpias は直説法なので、これだと、「私は君が部屋を掃除する(事実!君が部屋を掃除するのは事実だから!)ことを命じる」になってしまう。ゆえにこの文はアウツ。
「私は彼女が来ると思わない」のつもりで、No creo que ella viene.
Viene は直説法なので、これだと、「私は彼女が来る(事実だから!これは絶対的な事実!)とは思わない」という感じになってしまう。ゆえにアウツ。
まとめ
所謂現在形、点過去形、線過去形、その他諸々の活用形は直説法に属します。我々教員が説明しないせいであまり知られていないのですが、直説法の活用形にはもれなく、「発言が事実であること」をゴリ押しするというニュアンスがのっかっています。それゆえに、命令や願望を表す文等、直説法の活用形は使用不可能な文脈が結構あったりします。こうして直説法の活用形が使えない、となった時に代わりに使うべきなのが接続法なのです。接続法をいつ使うべきかを理解するには、どういうときに、直説法が使えないのか、を考えるのが近道かつ本質的です。まずは、こういう発想を持っておきましょう。
