私の担当する二年生以上向けの購読の授業、はじめて(だよね?)お会いした、かなりカッチリスペイン語をやっていそうな四年生から、スペイン語の小説を読みたいのでおススメ教えて。と訊かれたのでいくつか紹介します。彼以外にも、中上級レベルの皆様の参考になれば。
いずれもスペイン語圏の大人向けに書かれた小説ですので、一切の手加減のないガチのスペイン語で書かれています。手ごわいと思いますが、達成感も学習効果もひとしおです。頑張ってみてください。一語一語辞書を引き、わからないことはすぐ文法書を確認という読み方だとたぶん疲れるでしょうから、ほどほどで読み進めるのが吉です。慣れてくると、知らない単語の意味を推測する力もついてきますしね。とりあえず一冊読み切ってみてください。
ちなみに、以下でおススメする本は全部 kindle で読めます。いい時代ですね。また、いずれもわりと最近の作品です。もうおじさんには、古典を腰据えて読むだけの体力がないんや……そしてあらすじ書いてて思ったんだが、記憶力が悪くなっており、細部がかなりあやふやです。許してほしい。
Alberto Espinosa という人の書いた小説。バルセロナが舞台だが、結構SFが入っていて、ロボットが普通にうろうろしていたり、瞬間移動の技術が一般化されていたりする。主人公はそろそろ 100 歳になろうかという女性で、この社会においてはそういう人のところに、その人の一番愛する人間にそっくりのロボットが訪れて、とある「権利」の行使をするか否かを尋ねることになっている。主人公の元を訪れたロボットはかわいい子供の姿をしている。
権利の行使にあたり、主人公の老婆が自分の歩いてきた道について子供の姿をしたロボットに語るのがメインの部分なんだが、これが結構沁みる。全人類の中で上位 2%には確実に入るであろうレベルの波乱万丈、愛にも憎しみにも悲しみにも満ちた人生なのだな。そして、最終的に、老婆とロボットがどのような結論を下すのかが読みどころです。
スペインの小説や映画、ドラマあるあるに、「急にジャンルが変わる」というものがあります。ミステリーだと思ってたら浮かれた青春ストーリーだった、みたいな。この作品にもばっちり、急にジャンルが変わる瞬間があり、その意味でもスペイン小説ビギナーにお勧めしたい。
Ruperto Long という人の小説。「電車が去るのを見ていた少女」という風にタイトルが知覚構文になっておりスペイン語の先生的にポイントが高い。
第二次大戦下の世界各国が舞台で、ナチスの迫害から逃げつづけるベルギー人少女とその家族、ナチス支配下のゲットーにいる少女の叔父(とんでもない二者択一を後に迫られる)、フランス外国人部隊に参加したジョージア系フランス人とウルグアイ人。この四者の物語が入れ替わり展開される小説。登場人物は実在の人がほとんどで、綿密な取材に基づく。
日本にも「ベルリンは晴れているか」のようなナチスとか戦中、戦後のドイツを扱った作品は多いが、作者がウルグアイ人ということもあってか、やはり視点がだいぶ違う気もする。この時代を扱った日本人作家の作品で、外国人部隊とかベルギー人にスポットがあたるということはほぼないような。この本は各国語に訳されているようですが、早く日本語版がでないかなと願ってやみません。人類全体の教科書にしてもいいくらいの名著です。
Elísabet Benavent という人の小説。前二冊がかなり考えさせられる作品であるのに対し、こちらはエンタメ要素がかなり高め(フカいところももちろんあるが)。
誰もがうらやむ生活を送る女と、人はいいけど何も持たない男が出会って……という話なんだが、出会うきっかけやら、出会ってからの関係の発展のアクロバティックぶりが実にスペインらしくて楽しめると思います。
作者はたぶん、今一番スペインで売れてる作家で、最近この人原作の Valeria がNetflix でドラマ化されるなど、飛ぶ鳥を落とす勢い。

まあ、ともかく、肩ひじ張らずに読めて笑えて、グッとくるという良作ですな。
他にもあるがとりあえずこのくらいで。ハズレもあるが、スペイン語圏、名作多しですよ。面白い本は常にさがしていますので、皆様も何かあれば是非、おしえてください。
