直説法と接続法を使い分けるのが難しい。じゃあなんとかしよう。ということで始めたこのシリーズ、これまでに扱ったのは、以下の三点の問題でした。
「法」とは? → 話をしている時の態度
直説法ってどういう態度 → 話している内容が事実であると強く主張
接続法 → 話している内容が事実であることを主張しない、事実関係に立ち入らない。あと、基本的に、従属節の中でのみ使おうね。
こんなところでしょうか。詳しくは↓
第一回:
https://tsutapino.com/archives/284
第二回:
https://tsutapino.com/archives/288
さて、接続法は、「使うならほぼ、従属節の中だよ」といいましたが、従属節の中だからといって、常に接続法を使うわけではありません。直説法を使う場合も多々あります。本日のテーマは、「どういう従属節の中で接続法を使うの?」でいきましょう。一応確認しておきますが、従属節とは文の中の文のことです。英語でいえば、I think that he comes. の that 以下、太字にした部分が従属節です。この英語の that に相当するのが que です。que の後にも文が来ますが、そこでは動詞が接続法になる可能性があります。que を使うとき、「動詞を接続法にするか否か」検討する癖をつけましょう。その 1 で詳しく書きましたが、「直説法が使えないときに接続法を使う」が基本です。以下で色々なパターンを紹介しますが、それぞれ、なぜ、直説法、「事実のゴリ押し」と相性が悪いのかを考えてみてください。これが深い理解のための第一歩です。
願望を表す表現 + que
典型的な接続法を使うパターンです。querer que 「que 以下を望む」とか、esperar que「que 以下を希望する」等々。
Quiero que vengas pronto. 「君がすぐ来ることを望む」
Espero que estés bien. 「君が元気だといいんだけど」
その 1 でも説明しましたが、そもそもこの願望を表す従属節の中では、直説法は使えないのでした。直説法は事実であることを強調する態度なわけですから、願望という「事実だったらいいな」みたいな話とは相性が悪いのでした。
この他にも、desear que, preferir que, ser preferible/deseable que 等の que 以下でも接続法です。
命令・依頼を表す表現 + que
願望パターンと同じ理由で、命令を表す節の中でも動詞は接続法になります。ordenar/mandar que 「que 以下を命令する」, pedir/rogar/suplicar que 「que 以下をお願いする」等。命令とか依頼も「事実じゃないことを事実にしろ」ということなので、事実であることにしか使えない直説法と相性が悪いのです。接続法は事実でないことに使ってもいいわけですから、この手の表現と相性がよい。と。
Os mando que estudiéis mucho. 「君たちにたくさん勉強するよう命ずる」
許可・禁止を表す表現 + que
許可や禁止も、「まだ事実になっていない、実行されていない動作をしてもより、しちゃだめ」と言う行為です。というわけで、直説法が使いにくい、接続法を使おう。となるわけです。代表的なのは、permitir/admitir que 「que 以下を許可する、可能にする」、prohibir que 「que 以下を禁止する」、dejar que 「que 以下をさせてやる」等々。
No te permito que vengas. 「君が来ることを私は許可しない」
疑い・可能性を表す表現 + que
つまり、「~かどうか疑わしい」とか、「~の可能性がある」みたいな表現ですね。事実かどうかがそもそもわからない話なので、事実であることをゴリ押しする直説法は相性が悪いです。その点、接続法は事実かどうかはどうでもいい、という態度なので、この手の表現とは相性がよいです。つかっときましょう。典型例は、dudar que 「que 以下を疑う」や、ser posible que 「que 以下の可能性がある」などです。
Es posible que no podamos entrar en la universidad. 「私たち、大学に入れないかも」
感情や判断を表す表現 + que
「~でうれしい/悲しい」とか、「~するのはいいことだ」のような表現でも接続法を使います。これ、初級レベルの人が躓きやすいというのはわかるでしょうか。
Me alegro de que estés aquí. 「君がここにいてくれて嬉しい」
この文を読む感じ、「君」がここにいることは事実でしょう。そして、この文では事実のことを表すのに接続法(estés)を使っています。「直説法は事実、接続法はウソ」みたいな理解をしているとここで盛大に躓きます。
こうした文において、話し手が表現したいのは「嬉しい」という自分の感情なわけです。それなのに、que 以下で直説法を使い、ゴリ押しをしてしまうと、この「嬉しい」の部分がぼやけてしまいます。なので、que 以下では接続法を使い、あっさり目に表現することで、「嬉しい」の感じを際立たせているわけです。
……わかりづらいですか?そうなんですよね、こういう感情パターン、どう説明しても、日本語母語話者的にはいまいちピンときづらいのです。まあ、とりあえず、そういうものと丸暗記しておいてください。
まとめ
ぶっちゃけた話、今日とりあげた内容の多くは皆さんのお手元にある教科書にもかいてあると思います。ただ、願望や命令の節の中で、何故接続法がつかわれるのか?を説明しているものは多くないと思います。大事なのは、接続法がつかわれる環境は様々ありますが、いずれも、事実のゴリ押しと意味的に、あるいは論理的に相性が悪いという点で共通しているということです。この理屈を理解していただきたく、今回の分を書きました。
今回、この記事で紹介したパターンは接続法を使う環境のごくごく一部です。以前の記事で紹介したスペイン語文法ハンドブックや中級スペイン文法では網羅的に接続法を使うケースが紹介されていますのでぜひぜひ参照してください。腰を抜かしそうになるくらい、たくさんの表現が紹介されています。それらを使いこなすのに、丸暗記をするのは大変でしょうし、効率が悪いです。接続法とは?という理解がしっかりしていれば、接続法を使うか否かが自明のこととして判断できるようになりますので、暗記にかかる負担が大幅に減らせますし、効率的ですよ。
次回は「直説法と接続法の両方が使えるケース、ただし、意味が微妙に異なる」をとりあげようかな。
